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TNFD提言への対応

方針・考え方

すかいらーくグループは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に賛同するとともに、2024年5月より、賛同企業が自然資本に関してリスク管理と開示の枠組を構築するために設立されたTNFDフォーラムに参加しています。
昆明・モントリオール生物多様性枠組みにおいて明文化された、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させる「ネイチャーポジティブ」の考え方・目標に賛同し、生物多様性および生態系サービスに対する自社の依存関係と影響についてのリスク評価をもとに、サプライヤー、ビジネスパートナーと協業して取り組むとともに、自然関連のステークホルダーに対するエンゲージメントを推進していきます。
また、TNFDの推奨するLEAPアプローチ※に基づき、自社の自然関連の依存・影響、リスク・機会の分析のもと、「ガバナンス」、「戦略」、「リスクと影響の管理」、「指標と目標」の4つの柱に沿って自社の取組み状況や分析結果を整理します。
※LEAPアプローチ:自然との接点を発見(Locate)、依存関係と影響を診断(Evaluate)、リスクと機会を評価(Assess)、自然関連リスクと機会に対応する準備を行い投資家に報告(Prepare)といった場所に焦点を当てて、自然資本への影響や対策の優先順位を付ける方法

当社のTNFD提言への対応状況

すかいらーくグループは「TNFDアダプター」として、2024年5月よりTNFD提言に沿った情報開示を開始しています。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)最終提言及びTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)最終提言V1.0が推奨する開示内容を掲載しています。

TCFD・TNFD対照表はこちら ⇒ https://corp.skylark.co.jp/sustainability/environment/tcfd_tnfd/

一般要件

  1. マテリアリティへの適応
    TNFDに基づく自然影響関連評価については当社の自然資本への依存と、事業活動が自然資本に与える影響をダブルマテリアリティの考え方で分析・評価しています。
  2. 開示の範囲
    直接操業とバリューチェーン上流を対象としています。
  3. 自然関連課題の存在する拠点・場所
    今回の分析では以下の拠点を分析の対象としています。
    バリューチェーン 事業拠点 地域
    食材加工 マーチャンダイジングセンター(MDC) 東松山MDC(埼玉県東松山市)
    原材料生産 牛肉の原産地 オーストラリア・ウルグアイ
  4. 他のサステナビリティ開示との統合
    気候変動に関する情報開示は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに沿って開示しており、今後、TCFDとTNFDの統合開示を進めます。
  5. 考慮した時間軸
    今回の分析では短期(0~2年)、中期(3~5年)、長期(5年超)を考慮しています。影響度については2030年時点のものとして検討しています。
  6. 組織の自然関連課題の特定と評価における先住民、地域コミュニティ、関連するステークホルダーの参画
    すかいらーくグループ人権方針をもとに、サプライヤー・パートナーなど関連するステークホルダーの皆様との対話を強化するためCSRチェック、人権デューデリジェンスを行い、現地の情報収集、人権尊重の取り組みを強化しています。

ガバナンス

取締役会の監督体制 経営者の役割

当社は、取締役会による監督のもとグループ横断的にサステナビリティ経営を推進するガバナンス体制を構築しています。気候変動や生物多様性、水資源の保全などサステナビリティに関わる取り組みの意思決定機関として、代表取締役社長を責任者である委員長、CSuO(最高サステナビリティ責任者)を副委員長、代表取締役会長及び全執行役員、グループ会社社長が委員として構成される「グループサステナビリティ委員会」を設置しています。
「グループサステナビリティ委員会」を随時開催し、サステナビリティに係わる全社方針や目標、施策の策定、重要課題であるマテリアリティの特定、モニタリングと年1回の見直し、および、サステナビリティ推進体制の構築や整備などを継続的に実施し、取締役会への報告を行っております。なお、同委員会には社外役員もアドバイザリーとして関与し、社外の視点での指摘、アドバイスを受ける体制としています。
サステナビリティ委員会では生物多様性方針の策定や、TNFDフォーラムへの参加を決議しました。また、2024年より役員報酬の評価に「GHG排出量の削減目標値」の達成をESG指標として追加し、当社のサステナビリティ経営の推進と役員報酬が連動する仕組みを導入しています。

先住民族・地域社会・影響を受けるステークホルダー・その他ステークホルダーに向けた人権方針とエンゲージメント活動、取締役会・経営者の監督

当社の展開するレストランビジネスは原材料調達に大きく依存しており、現地住民の人権や地域社会との関係性が重要と認識しています。グループ人権方針及び調達方針を策定するにあたり、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際基準が掲げる人権の尊重をもとにしています。
また、2023年より国連グローバルコンパクトへも賛同し、コミットメントを表明しています。
サプライヤーの選定時は、財務的な信頼性、品質の安定性のみならず、サプライヤーの従業員管理、人権配慮、環境への配慮、倫理コンプライアンス、その他の反社会的行為の状況など、ESG基準を組み込むことにより、社会的責任を果たしているサプライヤーを先して選定しています。各地の法律・習慣・現状で判断するのではなく、該当する日本国法に照らして著しい乖離があるか否かで判断しており、問題のある場合は取引を開始しない、という厳格なポリシーを実行することで責任ある調達に努めています。
また、先住民のFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の確保をサプライヤー選定時の要件の1つとしていること、さらに当社グループのマテリアリティの1つである「責任ある調達」の実効性の強化を目的として、内部通報窓口はサプライヤからも受け付けており、違反行為防止とサプライチェーン全体への浸透活動を推進しています。
人権尊重を含むサステナビリティに関わる取り組みの実行計画や進捗状況はグループサステナビリティ委員会で承認・管理され、取締役会へ報告しています。

リスクと影響の管理

直接操業・隣接地域・上流や下流のバリューチェーンにおいて、自然関連課題を特定、評価、優先付けするプロセス

リスクと機会の特定、評価、優先付けについては、当社グループの事業規模や特性を考慮に入れながら、適切に対処するよう努めています。
自然資本に関してはTNFDの推奨するツール、『ENCORE』、『IBAT』、WRI Aqueduct『Water Risk Atlas』などを活用してデータ収集を行い、直接操業・バリューチェーンにおけるリスク・機会を特定しています。

管理プロセス 組織全体のリスク管理への統合・情報提供の状況

代表取締役社長を委員長、代表取締役会長および全執行役員を委員とする「グループリスク・コンプライアンス委員会」でグループ全体のリスクマネジメントを統括しています。
また、気候変動や自然資本などのサステナビリティ関連リスクについては、「グループサステナビリティ委員会」でリスク、対応策を管理しています。
投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある「事業等のリスク」を特定し、継続的にリスク管理を実施しています。この事業等のリスクは1年に1回見直していることと、エマージングリスク(新興リスク)を設定することで、当社の持続可能性を高めることに繋げています。

戦略

TNFDが提唱する「LEAPアプローチ」に従い、バリューチェーンと自然資本との依存と影響、リスクと機会を分析しました。

【Locate】事業と自然との接点の特定

生産者・サプライヤーからの原材料調達を上流、レストラン事業に関わる工場や店舗でのプロセスを直接操業、食材残渣などの廃棄段階を下流として、当社のバリューチェーンをマッピングしました。

今回の分析では、利用できるデータの正確性を考慮し、対象を上流・直接操業に設定しました。外部ツールのENCOREを活用し、当社事業と自然資本との相互関係を評価したところ、バリューチェーン上流は自然資本への影響・依存が大きいことを確認しました。下流のバリューチェーンである食品廃棄物については調査を進め、今後の開示を検討します。

<ENCOREによる自然資本との関係性分析結果>
自然資本への影響

自然資本への依存

【Locate】自然に影響を与える可能性のある拠点の推察

当社のバリューチェーンの各段階における、自然資本に影響を与える可能性の高い拠点を推察しました。
当社の拠点は約3,000施設あり、店舗(レストラン)がその大部分を占めています。
1店1店の自然資本に与える影響や依存は小さいかもしれませんが、事業全体で考慮した場合には非常に大きいと認識しています。特に自然への影響度・依存度が集約される拠点は、各店舗で使用する食材原材料の「原産地」と、その食材の加工を担うセントラルキッチン「マーチャンダイジングセンター(以下MDC)」と推察して分析しました。
ENCOREはセクター全体の一般的な評価ツールであることから、当社固有の分析を進めるために、SBTNの提供するHigh Impact Commodity List(以下HICL)を活用して自然リスクの高い原材料を特定し、その原産地を二次評価の対象としました。
HICLの原材料のうち、今回は当社で最も購入金額の高い「牛肉」を対象とし、その原産地をバリューチェーン上流の拠点として分析しました。
HICLに該当する当社の主要原材料
牛肉 豚肉 鶏肉 パーム油
乳製品 大豆 トウモロコシ
コーヒー ココア アボガド バナナ

【Locate】優先地域の特定

TNFDでは、優先地域とは「事業活動の影響を受けやすい地域」かつ「当社にとって財務リスクの高い地域・拠点」と、「事業活動の影響を受けやすい地域」を以下の地域と定義しています。
  • 種の多様性を含めた生物多様性にとって重要な地域
  • 生態系の完全性が高い地域
  • 生態系の完全性が急速に低下している地域
  • 物理的な水リスクの高い地域
  • 先住民や地域社会、ステークホルダーが利益を享受する、生態系サービスにとって重要な地域
推察した当社の拠点【直接操業:MDC】【バリューチェーン上流:牛肉原産地】が「事業活動の影響を受けやすい地域」に該当するか、TNFDが推奨する外部ツールを活用し調査しました。
【直接操業拠点:MDC】

色の濃い地域はリスクが高いことを示す

当社で操業する全てのMDCについて評価したところ、全ての拠点が「事業活動の影響を受けやすい地域」に隣接していることを確認しました。
中でも、東松山MDCは当社で最も多くの店舗へ食材を供給しており、主力生産拠点として稼働しています。仮に東松山MDCの生産が停止することを考慮すると、当社の事業に甚大な財務インパクトを与えるリスクがある拠点であることから、直接操業における「優先地域」を東松山MDCと特定しました。

【バリューチェーン上流拠点:牛肉の原産地】


当社で調達している牛肉は、その大部分を海外からの輸入に頼っています。主要な原産国について、TNFDの推奨するツールを活用し、生態系との関係性を評価しました。
当社へ牛肉を供給している主要原産国のうち、オーストラリア・ウルグアイにおける牛肉の生産が停止することによる財務インパクトは甚大であることから、バリューチェーン上流における優先地域として特定しました。

備考 活用ツールについて
地域 活用ルール
生物多様にとって重要な地域 IBAT(保護地域、KBA、絶滅保護種)
生態系の完全性が高い地域 Global Forest Watch(global biodiversity intactness)
生態系の完全性が低下している地域 WWF Risk Filter Suite(biodiversity risk filter)
水リスクが高い地域 WRI Aquiduct(Physical Risks Quantity)
先住民・地域社会にとって重要な地域 Global Forest Watch(Indigenous and Community Lands)

【Evaluate】依存と影響の特定

Locateフェーズにて特定した優先地域「東松山MDC」「オーストラリア・ウルグアイ」において当社の行っている事業活動、「MDCの操業」「牛肉の生産」が自然資本へどのような影響を与えているのか、また自然資本へどのように依存しているのか整理しました。

【Evaluate】依存と影響、重要度の優先順位付け

相関図から当社のバリューチェーンは水資源と深く関わりがあり、重要度が高い自然資本であることがわかりました。
当社では「水資源の保全」をマテリアリティとして特定しており、優先的に取り組むべき課題と認識しています。

【Assess】リスクと機会の特定

東松山MDC、オーストラリア、ウルグアイにおける依存と影響の関係性をふまえ、事業活動に影響を及ぼすリスク・機会を定性的に評価・特定しました。
シナリオの策定にあたってはTNFDの推奨するシナリオを検討し、シナリオ♯2を想定して分析しました。
今後は複数のシナリオを用いた分析を行い、戦略のレジリエンスを強化してまいります。

  【直接操業拠点:MDC】
カテゴリ 項目 影響時期 当社への主なリスク・機会 影響度評価
移行リスク 政策 排水や廃棄物への法規制強化 中期~長期 新たな課税や法規制によるコストの増加、製造コスト、物流コストの増加
市場 消費者行動・嗜好の変容 短期~長期 消費者需要の変化による減収
評判 ブランド価値の毀損 短期~長期 生物多様性課題への対応遅れにより社会からの信用失墜、ブランドイメージの低下による減収
物理リスク 急性 自然災害の増加 短期~長期 工場の停止による減収
慢性 環境悪化による河川の水質汚染 中期~長期 水質悪化による管理費用増
機会 市場 災害の激甚化、頻発化 中期~長期 災害時の対応による社会的信頼、評判の向上
評判  環境汚染を防ぐ取り組み推進 中期~長期 取り組みを推進することで地域社会への貢献度を向上

【バリューチェーン上流:牛肉の原産地】
カテゴリ 項目 影響時期 当社への主なリスク・機会 影響度評価
移行リスク 政策 課税やトレーサビリティの強化 中期~長期 新たな課税や法規制による店舗運営コストの増加、原材料調達コストや製造コスト、包材コスト、物流コストの増加
市場 サステナブル牛、畜産GAPなど認証制度の浸透 短期~長期 消費者需要の変化による減収
評判 ブランド価値の毀損 短期~長期 生物多様性課題への対応遅れにより社会からの信用失墜、ブランドイメージの低下による減収
物理リスク 急性 土地転換による洪水・水害の誘発 短期~長期 原材料価格の高騰、代替食材調達コスト増
慢性 環境悪化による疫病の流行など肉用牛の生育への影響 中期~長期
機会 市場 消費者行動・嗜好の変容 短期~長期 環境配慮メニューの導入、ブランドの開発
評判  ステークホルダーの意識の高まり 短期~長期 投資家コミュニティからの資金流入による株価上昇

指標と目標

リスクと機会の評価・管理に用いる指標
自然への依存と影響の評価・管理に用いる指標

取水量の削減、環境負荷軽減(廃棄物排出量、使い捨てプラスチック排出量)、生物多様性の保全(国産野菜のJGAP認証、パーム油のRSPO認証、紙製品のFSC/PEFC認証などへの切り替え)、森林破壊ゼロを自然関連リスク・機会を評価・管理する指標としています。